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オリジナルサイドストーリー
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オリジナルサイドストーリー

上海にて

「——あァ!?」
 口の中に突っ込んでいた歯ブラシを吐き出し、シェン・ウーは眉をひそめた。
 目覚ましい速度で近代化が進む上海の片隅に残る、1920年代に建てられた古ぼけた里弄(マンション)は、その存在自体がいまや奇跡であった。造りそのものは頑丈だったから、時の重みに倒壊せずにいること自体はさして不思議ではなかったが、どういうめぐり合わせなのか、貪欲な不動産業者に買い上げられて再開発の波に呑み込まれることもなく、21世紀を迎えた今もかろうじて現役を続けている。


變面

 ヘッドホンから流れてくるポップスをペースメーカー代わりに、毎朝5キロのロードワークをこなすのが、ユリ・サカザキの日課のひとつである。
 美容と健康のために身体を動かすのならフィットネスクラブでのバイトで充分だろうが、空手家としての鍛錬にはそれだけではとても足りない。そう思って始めたロードワークだが、父にいわせれば、これでもまだ足りないという。


ラスベガス

 イタリア国旗を思わせるあざやかな色彩が街角をいろどる季節、折からの寒さに反して人々の足取りが軽やかなものになるのは、このサウスタウンも例外ではない。
 日が傾き、あたりにひっそりとした冷たい闇が降りてくる時刻になれば、沿道の木々はきらびやかなイルミネーションのドレスをまとい、アスファルトに落ちる影を淡くかすませる。それはにぎやかな繁華街だけにかぎったことではなく、一般の家庭でも、クリスマスに合わせて我が家を電飾でおおい尽くす光景はさして珍しくない。


カサブランカ

 冷ややかな晩秋の風に乗って、教会の鐘の音が聞こえてくる。
 ベンチに腰を降ろし、じっと瞳を伏せていたアルバは、近づいてきた足音に気づいて顔を上げた。
 重苦しい鈍色の空——。
 のしかかってくるようなその空の下を、黒服の男たちがやってくるのが見えた。ある者は無言で、またある者はタバコに火をともし、ただ、みな一様に暗い表情で、男たちは玉砂利の敷かれた小道の上を歩いてくる。


難兄難弟

 その日、アンディ・ボガードはいつもより早く目を醒ました。
 まだ払暁までは時間がある。庭に面した障子を透かして、青い月の光が静かに部屋の中に染み入ってくる。
 しばらく月光の青さを浴びていたアンディは、静かに起き出して着替えをすませると、隣の部屋で寝ている舞を起こさないよう、気配と足音を殺して屋敷をあとにした。幾度となく往復したことのある山道を、月明かりだけを頼りに登っていく。


メランコリア

 今から1500年前、ここには西ゴート族が築いた城砦があった。
 今から800年前、ここはカタリ派がアルビジョワ十字軍を迎え撃った激戦の地となった。
 今から650年前、ここを黒死病の猛威が通りすぎていった。
 今から500年前、ここにどこからともなく風変わりな一族がやってきて住みついた。
 今から400年前、ここへ魔女狩りの波が押し寄せてくるのに合わせて一族は姿を消した。

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