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お楽しみ:ステージデザインの巻
こんにちは。
予告通り、今回は開発の背景チームから、アートディレクターの小原さん、セクションリーダーの松尾さん、そして今回ステージデビューされた(=背景を手掛けたのが初という意味です)スタッフの瀬野さんに、色々制作時のことを思いだして頂きながら、楽しくお話をお伺いしました。
それでは、どうぞ。
―今回はどのようなステージを目指したのですか?
小原:
今回目指したのは「さらにスケールアップした世界規模の格闘大会」です。グラフィクスの基礎部分は『KOF XII』を継承していますが、ステージごとにさまざまな仕掛けを用意して、例えば「私はこのステージがお気に入り」だというように、ステージごとにファンになってもらえるよう、それぞれに特徴を出すようにしました。
その結果、象や猿っぽい新種の生き物、相撲取りなどなんでもアリな世界になってしまいましたが…。
さらにもっとステージに注目して欲しい!というスタッフの欲求から、できる限り隠しキャラやラウンド変化、プレイヤーの行動でアクションを起こす観客など、さまざまな遊び要素を入れ込んでボリューム満点に仕上げてます!
―今回も観客がよく動いて賑やかな雰囲気ですね。
小原:
スタッフも『KOF XII』を担当した人達がほとんどで、2D背景やドットアニメーションの技術としてはかなり成熟してきていると思います。基本的にはスタッフのやりたいように表現してもらう方針ですが、今回は皆こだわり部分が多くて、さすがにスケジュールを圧迫してきたので、バッサバッサ切りました…w。
松尾:
大まかな演技だけ指示して、チェックにまわってきたものを見ると「この観客ってこんな人だったんだ…」みたいな面白さと、「さすがにこれはマズいんじゃ…」という趣味まるだしのものがあったりして大変でしたね。
―ステージのイメージはすぐに決まったのですか?
小原:
実は、ステージ選定は『KOF XII』の制作とほぼ同時平行して行っていました。
ひだまりジャングルステージなどはかなり初期にイメージが固まっていたのですが『KOF XII』が忙しくなってきたので、一時中断して半年くらい時間が空いてしまいましたが…。
あと、ステージのモチーフは色々な国をモデルにしていますが、ステージ名に特に国名を出さないという方針だったので、絵で国の特徴を出しやすいものを選定していきました。
松尾:
今回も色々なステージがボツになっていきましたよね…。スタッフで沢山のイメージを出して話し合いをしましたが、なかなかこれだ!というものが無くて…。でも、ああいう話し合いは必要ですね。何もない所から形になるまで見ていると出来上がった物に愛着がわいてきます。
瀬野:
僕は今回始めてステージのスタッフとして参加しました。発想の段階では基本的には何をやっても自由!なので、色々と“妄想”を広げたのですが、それがユーザーに伝わらないと意味がないので、よりシンプルでわかりやすく形にしていきました。
松尾:
瀬野君の妄想いっぱいのボツ集はいずれどこかでお見せしたいと思っていました。今回は、背景チームの皆が妄想を形にしてゆく過程で産み出したボツ集をまとめてご覧頂きましょう!!
―右上にはクライミングエリアのような岩場が見えますね。ボツと言えど『KOF XIII』のステージらしい奥行きの感じられる、素敵な仕上がりです。左下はプールでしょうか。
はて、ステージに混じって右端に力士がひとり…“ビームサーベル”をリュックサックに差していますね。気のせいか、社内に元ネタな人がいるような…
では、今回の主要ステージの紹介をお願いします。
小原:
まずは「ひだまりジャングルステージ」ですが、先ほども書きましたが、このステージはかなり初期の段階で出来上がっていたステージです。『KOF XII』では自然風景が無かったので今回ぜひやりたかったステージです。
松尾:
たくさんの鳥がでてくるので、神戸の花鳥園に行って一日中観てまわりました。最初、考えている段階では湿度の高いじめっとしたイメージだったのですが、描いているうちに爽やかな楽園のようなステージになりました。そこに新種の生き物が独特の踊りで大会を盛り上げてくれます。
小原:
このステージは観客の造形も独特ですが、動きが非常に特徴ありますね。
瀬野:
特にお腹の動きですね!何度もリテイクを受けて涙を流しながらドットを打っていました。気を抜くと硬い動きになってしまうので、常に水風船をイメージして描くように心がけました。
松尾:
そうそう、あの柔らかそうな肉感にはこだわりました~。自分の趣味まるだしで好きにさせてもらいました。
瀬野:
隠しキャラで出てくるグリフォンマスクが、この自然の中にナチュラルに登場していていい感じですよ。
小原:
次は「マハラジャ広場」ステージです。このステージの特徴は、何といっても象が他よりも目立っていることですね。私はわかりやすいコンセプトが好きなので、単純に「象に囲まれて逃げ場が無いところ」で戦ったら面白いかも…という発想です。画面のほとんどを象が埋め尽くしています。
松尾:
象の動きを自然に見せるのに苦労しましたよね。
小原:
いや、本当に。このステージは象による威圧感みたいなのを目指したので、大きな動きを極力無くして「らしさ」を出すようにしました。大変でしたけど画面で見たときは今までにないステージになったなと思いました。
瀬野:
実はこのステージ、観客達がゲージ類であまり見ないですが(泣)左端の太鼓演奏者の動きは個人的にかなりこだわってます。かなり研究しました。
松尾:
社内にインド関係に詳しい人がいたから、聞きまくってましたね。
瀬野:
このステージの頃はまだ駆け出したばかりのまさに新人だったので、扇子の動きなどは研修も兼ねてやってましたが、今思うとよく動かしたな…と思います。(今なら3Dなどで動かしたりしますが)ちなみにすべて手描きです。
小原:
あと、プレイヤーの「ある行動」でステージ両端のおじいさんの動きが変わります。なぜこうなるんだ?という動きをします。ぜひ、ご覧ください。
小原:
次は「大相撲秋場所」ステージですね。さわやかな秋晴れの中、暑苦しい力士達が肉寄せあって応援している図です。巨大な天狗や獅子舞など、遊び要素も満載で今回の中でも一番ボリュームがあるステージに仕上がってます。天狗や獅子舞の動きはプログラマーとかなりやりとりしましたよね?
瀬野:
やりたいことは色々思いつくのですが、一体どうやってゲーム上で実現するのか?ということを話ました。最終的には、ほぼすべてのステージで「背景の演出調整ツール」のようなものを作ってもらうことになり、プログラマーの方々には本当にお世話になりました。
松尾:
おかげで動きのある演出ができて面白いステージになってよかったです。相撲取りのアニメーションも他のステージよりボリュームもあってこだわりの演技をしています。
小原:
またもや太いキャラが大勢います。
松尾:
同じ太キャラでも「ひだまりジャングル」とは違うのです。おなかの揺れ方が違います。ひだまりは水風船ですけど、大相撲は筋肉太りなのでやや固めです。ここはめちゃくちゃこだわってます。皆さん、是非このこだわりをご確認ください。
小原:
あと、隠れキャラでナコルルがどこかに出てきますが、あまり発見されてないようです。
瀬野:
そうなんですか?竜白は結構簡単に見つかりましたけど…ちょっと遠すぎました?
僕は中央の鳥居の「ある仕掛け」に気付いてほしいです。
小原:
続いて「バスターミナル」ステージです。赤バスと衛兵・時計台と非常にわかりやすいアイテムで構成されていてどこの国かすぐにわかります。天候や全体の色味などその国らしい表現をしたつもりですがどうでしょう?バスに乗っている観客も相当な数になっています。
松尾:
300人くらいいるんじゃないですか?このステージの観客は数も多いですが、みんな窓からのぞいているいうシチュエーションなので、場所をきちんと決めておかないといけなかったので最初の段階でかなり設計して描きました。
小原:
プロジェクトの終盤に作成したステージなので、スタッフもXIIIのゲーム作りにかなり精通してきた時期でした。大きな問題もなく、超優良ステージだった記憶があります。
瀬野:
ここの遊び要素はちょっとこだわりました。ユーザーの皆さんはすでにお気付きかも知れませんが、ステージ右端の婦警さんのリアクションがかなり気に入ってます。
松尾:
リアクションする確率の調整にすごく時間をかけましたよね…。何もそこまでこだわらなくてもって周りから言われてました。
瀬野:
いいんです。こういうこだわりがゲームの質を高めるのです!!
小原:
すばらしいお言葉ですw私のお気に入りは、隠れキャラの山崎です。
小原:
さて、次は「摩天楼」ステージです。
遠景の気持ちいい広がりと、気球やヘリなどが飛び交って賑やかさを表現しています。質感の鉄とサビはかなりのこだわりです。ステージごとに変わる演出もみどころです。他のステージと違って、大きく移動する演出が多いので結構楽しんで作ったのでは?
松尾:
遠景の描き込みはもうイイです…。広がりを表現するためにたくさんのレイヤーを重ねているのですけど、見えない部分もかなり描き込んでいます。2Dは視点が変わらないので、画面の広がりを表現するためにうそのパースをよくつきますけど、今回は量が多くて大変でした。
小原:
遠景描きたいって、最初言ってなかったでしたっけ?
松尾:
そんなこと言ってませんよ!いや、もうやるしかないと覚悟はしましたけど…。
瀬野:
僕はアナウンサーが乗り出しているヘリの登場がお気に入りです。ラウンド開始時に出てくるのですけど、あの絶妙なタイミングを見て欲しいです。あと、ステージ内に沢山あるモニターの映像が「ある時」別の映像になるのですけど、気づいてもらえてるか心配です。
小原:
もっと心配なのは、このステージにダックキングが隠れキャラで出てくるけど、見つけてもらえてるだろうか…。
松尾:
ひよこが登場してるので気づいてますよ!多分。
小原:
さてさて、「ローズステージ」です。『KOF XIII』の決勝ステージで、ローズが自分の趣味で作った私設スタジアムです。壁面の豪華な装飾と今回の衣装にあわせたバラがイイ感じです。
松尾:
このステージは…本当はスケジュールに入ってなかったのですよね?
小原:
そうです。はじめは別のステージだったのですけど、今回の『KOF XIII』はストーリーも重要な見せ場なので、それにあわせて作り直しました。おかげでエンディングデモやオープニングの映像も差し替えてもらったりで、ご迷惑をおかけしました。
瀬野:
壁の装飾がすごいですね。
小原:
こういう描きこみをするのが大好きな人がいるのでお任せしました。好きなはずなのに泣いている姿を見た気がしますが、気にしてません。
松尾:
ひどい人です…。
小原:
では、最後に「運命の扉」「忘却」ステージです。ボスステージになります。
「運命の扉」の設定は灼熱の地獄。こんな所にいたら死んでしまうと思わせるようなステージです。「忘却」は一転して扉の中の世界で光にあふれたアッシュの心の世界を現しています。
松尾:
どちらもステージデザインとしてはやりがいのあるものですけど、設定を見る限りはかなり難しいな…と思いました。
瀬野:
「運命の扉」の雲の表現がすごいですね。異様な世界が表現されています。
小原:
とにかく力強いイメージを目指しました。ボスステージってデザイナーの好きにできるステージなので楽しかったです。でも、膨らませた妄想をゲームで表現する時にはプログラマーの方とのコミュニケーションが大事だと実感しました。
小原:
「忘却」のイメージも大変でした。設定上の指示は「何もない世界」…だったのでこれはどうしたものかと。あと、画面のイメージカラーは白色をベースにすることがかなり最初に決まっていたので、ゲーム画面として大丈夫か?という心配がありました。本当に何もない真っ白な中で戦うと自分の位置関係が分からなくなったりするので、必要最低限のイメージだけは描くことにしました。
瀬野:
ボスのエフェクトが真っ黒なので、今までにない面白い画面だと思います。
―最後にユーザーの皆様へメッセージをお願いします。
小原:
今回は遊び要素や隠しキャラなど、作り手側からユーザーの皆様へちょっとしたいたずらをしています。プレイしている方はもちろん、後ろで見ている大勢のギャラリーの方々も楽しんでもらえると嬉しく思います。もっとあんな事やこんな事をやってみたい!というアイディアが沢山ありますので、これからもKOFのステージにご注目ください!
『KOF XIII』のステージ紹介、いかがだったでしょうか。
公式サイトの TOP ページにもステージの画像を使っているのですが、実はこれ、『KOF XIII』のスケールを感じられるようなデザインを考えていた web 制作班が「イメージにぴったりだ!」と感じて、使わせて貰うことになったのです。
実際のゲームでは、ステージの変化やギャラリーのアクション、隠しキャラなど、一度見ただけでは探しきれない、ボリュームたっぷりのステージをお楽しみいただけます。
ぜひ、ステージにも注目して『KOF XIII』を楽しんでくださいね。
2010年8月11日 パニール