一七××年、七月。時は大江戸。
その日暮らしの浪人、大之介がブラリと立ち寄った町。そこは天下の台所、江坂でありました。
大之介はそこで様々な人々に出会います。
鷹を連れたナコルルという少女は、ねおじ山で自然に囲まれながら妹と暮らしているそうです。
お客でにぎわう茶屋「むささび屋」には、オテンバ娘の詩乃が店を切り盛りしていました。
河原には、小さなもののけを連れた異国の娘、真鏡名ミナがひっそりと暮らしています。
往来で刀を振り、侍にケンカを売るのは吉野凛花という少女です。
寺子屋では、イギリス人のサヤと橘右京というお侍が、授業を開いています。
剣術道場で指南をつとめる覇王丸に連れてこられた寺には、病でふせっている娘、命がいました。
夕刻になると、色と千夜のふたりの芸妓が揚屋「蜜蜂屋」で芸を見せてくれます。
優しい人の多い町ですが、牙神幻十郎と狂エ門という恐いお侍もいます。
旅を続けようかと迷う中、大之介はいろはと名乗る娘に誘われるまま、しばらく留まることを決意しました。
こうして、江坂で過ごす日々が始まります。
町での暮らしの中、大之介は何を学び、何を想うでしょう。そして、このあてない旅にどんな目標を持つようになるのでしょう。
これは、そんな大之介の「日々の思ひ出」です。
はるか昔、江坂にあったという物語のはじまりはじまりです―― |