秦の秘伝書をめぐる闘いが終わり、秘伝書はギース・ハワードの手に渡っていた。
「フフフ・・・これで秘伝書は3巻全部そろったというわけか・・・」そう呟き、バンダナの男に話しかける。
「ビリーよ、秘伝書は処分しろ。」
「エッ、どういうことですか?」
「元々あの秘伝書は何も教えてはくれぬ。最強の者が手にするという伝説のみが生き続けてきた。ただそれだけだ。2000年もの歴史の中ですべてをそろえ、手にした者がこの私だという事実さえ残れば、もう用はない。」
「しかし、何も処分しなくても」
「秦の血を引く双子の兄弟にとって、秘伝書は別の意味を持っている。奴らが秘伝書を手にすると、どうなるのかは私にも分からぬ」
「・・・完全復活されたギース様が、恐れるほどのことではないと思いますが・・・」
「恐れてはおらぬ。暗黒から蘇ったギース・ハワードが同じ失敗を繰り返すわけにはいかないまでだ・・・。あの忌々しいボガード達の時のようにな・・・」
ビリー・カーンはギースの眼光の奥に潜む執念の炎に何もいえず立ちすくんでいる。ギースは深く目を閉じ、窓の外に視線を移す。
「ビリーよ、街の様子はどうだ。」
「ハイ、ギース様を倒そうと躍起になっています」呪縛から解かれたようにビリーが答える。
「キング・オブ・ファイターズの手筈は整ったか?」
「ハイ、キム・カッファンやダックキングといった面々も呼応しているようです」
「フフ・・・。あの大会ほど私に利を与えるモノはない。この街の支配者はギース・ハワードだけだということを改めて思い知らせてやるわ」
長い沈黙を破って、ギースタワーに灯がともる。血に飢えた狼が牙をむくが如く、街に戦慄が駆け巡った。 |