カインとグラント・・・・。
この二人には、他人には計り知れない深い繋がりがあった・・・・
さかのぼること、19年前。まだカインがスラムにいた頃、彼には親友と呼べる男がいた。
その男の名は「アベル」
お互い孤児だった彼らは出会った頃から、全てを理解し合える仲となり、寝食はもちろんのこと、ひもじい時や辛いときも、互いを庇い、助け合ってきた。
ある日カインとアベルは、同年代の少年がリンチに合っている現場を目撃した。
暴行を加えているのは、スラムでも悪辣で有名なチンピラ集団で、言動からもそれが彼らの憂さ晴らしである事は明白だった。
それでも少年は無抵抗のまま殴られ続けるだけだった。彼には判っていたのだ。
抵抗すれば、更に殴られると・・・・。どんなに殴られても、耐えるしかなかった。
しかし・・・・・・・・・・肉の軋む音が何十回も街にこだました後、ようやくチンピラ共が去った時には、少年はすでに息絶えていた・・・・。
数時間後・・・・・。カインとアベルは、海が見える丘に、その少年を手厚く葬ってやった。
・・・・・・二人は、ずっと海を眺めていた。しばらくの後、カインはアベルを振り返った。
「・・・・俺は・・・・嫌だ。戦わずして、こんなところで朽ち果てるなんて・・・・・俺は、嫌だ!」
「カイン・・・・お前?」
「俺はいつか、ここから抜け出す。そして、全てを手に入れてやる!その時はおまえも一緒に来い!アベル!」
アベルは少しの間、黙っていたが、すぐ何かを決意したかの様な面もちでカインに向き直った。
「・・・・・・よし、判った。俺もここで死ぬのは嫌だ。おまえが突き進むというなら俺も突き進もう。」
「そうだ!俺達はこんな所で死にはしない!・・・・死んでたまるか!」
カインは拳を握りしめ・・・・そして、更に決意を固め言った。
「力が欲しい・・・・全てを手に入れる力が・・・・。そして、それにはアベル、おまえの助けが必要だ!」
「・・・・判ったよ、カイン。おまえを助けよう。おまえが表となるなら、俺は裏となって・・・」
夕暮れの日差しが彼らの影を地面に落とす。その二つの影は堅く、手を繋ぎ合っていた。
グラント
グラントの正体・・・・それは幼少からのカインの親友、アベル・キャメロンである。
幼き日にカインと共に夢見た野望・・・・・・・・・・・真の自由をセカンドサウスに体現させる為、カインを補佐する裏方の仕事を自ら買って出た。危険な裏の仕事ではあったが、アベルの仕事は常に完璧を誇り、カインの組織内での力を強めることに貢献した。
しかしある時、カインのあまりに早い出世をねたむ組織幹部の裏切りに合い、胸に凶弾を受けてしまう。
なんとか一命を取り留め、運動機能にも問題が生じなかったが、心臓にあまりに近い位置に喰らった為、摘出不能となってしまう。そして、その弾は確実に心臓に近づきつつあり、それが到達したときがアベルの最後だと言われている。 |