星の無い夜。地上では賑々しく、大勢の作業員と建設用機械がうごめいていた。張り巡らせた防塵用シートに「K.O.F.2001会場」の文字が踊っている。
その建設現場を一望できる高台の雑木林から、息をひそめ、それを見つめている者達がいた。
「(どうだ?見えるか、レオナ?)」
「(何も・・・)」
「(さっきもそれ言ってたぞ。それで?)」
「(特別なものはない・・・)」
暗視スコープをのぞきながらレオナが答える。
「(どういうこった。今度の大会のスポンサーにはネスツの息がかかっているんだぞ?何もないわけがねえ)」
「(・・・)」
前の大会・・・瓦礫の中に消えたあいつ・・・形見とも言えるムービーデータを見ていたあの時の思い・・・だが、その後、諜報部からあいつが生きているという情報が入った・・・本当にあいつは生きているのか・・・
「(大佐・・・大佐)」
「(あ、ああ、すまん。そうだな、今日のところは引き上げる。
レオナ!クラークと合流するぞ)」
「了解」

目の前に広がるコバルトブルーの海、漆喰と日干しレンガで作られた白い街並み。
日本辺りの旅行雑誌に特集記事でも組まれそうなこんな街にも、傭兵部隊の諜報拠点に使う隠れ家がある。
「クラーク。どうだ、そっちは?」
「収穫なしですよ。軍の回線でも調べましたが、今回のK.O.F.が公式大会であることは間違いありません」
「そうか・・・それでネスツはどうなんだ?」
「今回のK.O.F.のスポンサーにネスツの息がかかってるのは間違いないんですが、目的が不明です」
「バカな!ネスツは前の大会で街一つブッつぶしたんだぞ?目的が無いわけねえだろ!」
「でも、報道では人工衛星落下事故・・・」
レオナがつぶやく。
「くそっ、これじゃ、手の出しようがねえ!」
バンッとラルフが机を叩きつける。
「にぎやかだな」
皆が一斉に声のした方へ振り向いた。すると、いつのまにかドアの前に眼帯をした男が立っている。傭兵部隊を率いるハイデルンであった。
「教官!」
「これを見ろ」
ハイデルンは分厚い書類の束を机の上に置いた。そのトップページには、部隊内でのトップシークレットを意味する3つの「S」が記されている。ラルフは書類の束をひったくる様に読み進めた。読み進めるうちに、ラルフの顔色は紅潮し、ついにはうめく様につぶやいた。
「こりゃあ、一体・・・」
ラルフの手元をクラークとレオナがのぞきこむ。そこには偵察衛星から撮影されたと思しき一枚の写真が貼付されていた。写真には、新型のジャマーの影響だろうか、ひどいノイズがかかっていた。これでは詳細の判別は不可能だが、巨大な黒い影、とだけは見てとれた。
「・・・それがこちらの唯一の手がかりだ。それと、後はこれだ」
ハイデルンは、K.O.F.のパンフレットと大会参加チケット4枚を取り出した。
「4枚ですって?教官、参加するにはメンバーが足りませんよ。前は・・・」
「クラーク、パンフレットの参加者一覧を見てみろ」
三人は言われた通り、参加者一覧のページを目で追った。
「ムチ子!?」
ラルフが場に似合わない頓狂な声を挙げた。
「そうだ。正真正銘、本物のウィップだ。裏もとってある」
「あんにゃろ!連絡もよこさねえで!」
「それだけではない。エントリーチームを見てみろ」
そして、さらに驚くべき事に大会エントリーチームの名前の中には・・・
「何!?ネスツチームだと?」
「ネスツは完全な秘密組織・・・ごく一部の限られた者にしかその存在は知られていないはず・・・」
ポツリとレオナが言う。
「しっかし、ムチ子が大会参加者に名前を載せているという事は、すでにチームを組んでいるはずだ。教官、俺達は誰をチームメンバーに?」
「・・・今回は私がお前達と共に大会に参加する」
「ヒュー!そいつはスゲエや!」
「・・・軽口はここまで。全員ブリーフィングルームに集合!」
「ハッ!」
三人はハイデルンに一斉に敬礼した。敬礼しながらラルフは思う。今回の任務、一体どうなるのか・・・しかし、やるしかない。そう、自分達はやるしかないのだ。



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