もう随分と長い間つけられていた。

だが、そんなことはどうでもよかった。
くれば叩き潰す。
ただ、それだけだ・・・

「ふむ。すさまじい気力だな・・・さすがに紅丸が警戒するだけのことはある」
男はすでに自分の尾行がバレていることは承知していた。何故なら、彼が後をつけている赤毛の男は、徐々に人の少ない路地に向かって歩き始めていたからだ。
日のあたらない袋小路に差しかかった時、赤毛の男は振り返った。
「何の・・・用だ・・・」
男の声を聞いて、彼・・・セスは「闇」という単語が脳裏をよぎる。人間が根源的に恐れ、嫌い続けてきたもの・・・闇。そう、この赤毛の男は「闇」そのものの様に思えた。
口の中に嫌な渇きを覚えながらも、セスは語りかけた。
「八神・・・庵だね。捜したよ・・・随分とね」
対峙している八神を取り巻く空間が、陽炎が立った様に揺らめき始めた。
「・・・誰だ?」
「失礼、自己紹介が遅れたね。私はセスというものだ。よろしく」
「・・・名前などどうでもいい・・・何の用だ」
「つれないね。八神君。君が今回キング・オブ・ファイターズに招待されてるのは知ってるね?」
「・・・だったら、どうした?」
周囲の空間の歪みが、さらに激しくなってきた。セスは内心うめく様な思いだったが、言葉を続けた。
「ならば、草薙京が大会出場すると言ったらどうかね?」
「草薙!?」
八神の顔色が変わった。同時にグワッと周囲が大きく歪んだ。
普通の人間なら、この凶凶しい気の放射を受けるだけで命を失うかも知れない・・・これが八神庵の力・・・
「・・・君は、私とチームを組んで出場する事になっている・・・知っていたかね?」
「・・・貴様と・・・?」
「そうだ。後、二名いるがね。・・・どうかな?」
「・・・大会に出てやってもいい・・・ただし・・・」
「何かね?」
「俺の足を引っぱるなら、その場で潰す!」
八神の体から放たれた気が烈風の様に奔流し、セスは思わず片膝をついた。
一瞬の後、前方を見ると、八神の姿はそこには無かった。立ち上がったセスは二、三度首をまわすと呟いた。
「・・・まいったね。奴は人間か?」

波打ち際で楽しむ人々の楽しそうな声があちらこちらで聞こえる。
屋内プールは今日も盛況のようだ。携帯電話で話す彼女の眼前には、闘いにはおよそ縁のない光景が広がっていた。
「そう。わかったわ。こっちも今日会う予定よ。じゃあね」
携帯電話を切るとシートに寝そべった。
「ああ、いい気持ち・・・」
彼女は見事な肢体を横たわらせた。それに魅せられたのか、男達が彼女に群がってきた。が、彼女はその男達の舐めるような視線など全く気にしていない様子で、彼らの誘いを受け流していた。
「ヒュー!いい眺め」
そんな男達の中から、彼女に一人の男がことさら大きい声をかけた。彼女を独り占めする気かと思った男達だったが、眼帯をしたその男の鍛えこまれた肉体に圧倒され、散り散りになり去っていった。
「相変わらず凄い人気者で」
「あら、ラモンもう来たのね」
彼女は起き上がり、椅子に腰かけると、グラスに入ったジュースを飲んだ。
「まあ、ヴァネッサさんのお呼びとあれば、前大会の縁もあることですしね」
「そう言ってくれるとうれしいわ。それで、早速だけど、今大会最後のメンバーが決まったわよ。」
「へえ、誰ですかね」
「八神庵よ」
八神と聞いてラモンは渋い顔をした。
「そりゃ、また大物だ・・・扱いきれますかね」
「まあ、なんとかなるんじゃないかしら?それに彼なら十分すぎる戦力だしね」
ヴァネッサはそういうと、グラスにジュースを入れてラモンの方に振り向いた。
「まっ、俺はかまいませんけどね・・・」
ラモンはグラスを受け取ろうとした。
「ところで今、何時・・・あっ、いけねえ!記者会見が始まっちまう!それじゃ、また大会で!」
そのまま、ラモンはジュースを受け取らず脱兎のごとく駆けていった。
「もう、せっかちなんだから・・・まあ、いいわ。面白くなりそうね」

グイッとジュースを飲み干すと、ヴァネッサはその場を後にした。



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