裂帛の気合が道場の中に響きわたっている。リョウ・サカザキとその妹ユリの朝稽古である。リョウの拳が大気を震わせ、ユリの上段蹴りが唸りをあげる。
やがて激しい組み手が終わり、二人は距離をとり、一礼した。
「腕をあげたな、ユリ。」
「当たり前よ!何回K.O.F.に出てると思ってんの?」
「そうだったな。・・・あ、飯にしないか?」
「そうね。・・・あら?ロバートさん?」
こんな時間に道場に顔を出したことのないロバート・ガルシアが、ふらりと現れた。
「どうしたロバート?顔色が良くないぞ。」
「・・・ヤバイんや。めっちゃマジでヤバイんや・・・」
ロバートはつぶやくなり、その場にへたりこんでしまった。
「ユリ、水だ!水を持ってこい!ロバート、しっかりしろ!どうした?何があったんだ?」
リョウは、何事かブツブツとつぶやくロバートの口元に耳を寄せた。
「リョウ!朝っぱらから何を騒いどる!ん?・・・ロバートか?どうした?」
道場に出てきたタクマが、リョウと同じ様にロバートの傍らにしゃがみこんだ。
「・・・ば、買収なんです、師匠ぉぅ・・・」
消え入りそうな声で、ロバートは答えた。

道場内には深刻な空気が漂っていた。ロバートを奥の部屋に一旦寝かしつけた三人は、頭を寄せてヒソヒソと話し始めた。
「ロバート、相当まいってたみたいだな。」
「何だか、財団の公開株の買い占めがどう、とか、開発利権が、とかよくわからない事を言ってたわね・・・」
「いずれにせよ!」
「しーッ!お父さん、声が大きい!ロバートさん起きてきちゃうじゃない!」
ユリにたしなめられたタクマは、声のトーンをやや落とした。
「・・・いずれにせよ、ロバートの危機は、わしらの危機。つまり極限流の危機というわけだ。」
「?」
世故に疎いリョウは、タクマの論理の飛躍についていけないでいた。タクマは構わず続ける。
「そして、この危機を乗り切るには金がいる、という事だ。」
「・・・でも、お父さん、そんなお金、うちには無いわよ。」
「そこで、これだ!」
タクマはにやり、と笑うとおもむろに懐から4つの封筒を取り出した。
「?」
「わしらは、今年のK.O.F.に出場して、優勝するのだ!」
「K.O.F.?どういうことなんだ親父?」
「忘れたか、リョウ。K.O.F.の優勝チームには莫大な賞金が贈られることを!しかも、今年のK.O.F.は世界大会だと聞いた。賞金の額も、今までとはケタが違うだろうて!」
「そうか!わかったぞ親父!つまり、優勝すれば、ロバートもこの道場も助かる、というわけだな!」
「その通り!」
「・・・でも、ロバートさんがあの調子じゃあ、優勝はちょっと・・・あ?ロバートさん!」
そこには興奮しているのか、頬を紅潮させたロバートがすっくり立っているではないか!
ユリの声には答えず、ロバートはタクマの前に座り込むと、無言でタクマの手をギュッと握った。
「やっぱり、頼れるものは師匠や!行きましょ、みんなで!K.O.F.に!」
「おお、ロバート!よくぞ言った!そうと決まれば善は急げ、だ。各自、早速支度をすませるのだ!」
「押忍!」
タクマも、リョウも、ロバートも、その意気天を衝かんばかりである。
しかし、ユリはふと思った。
今回も会場までの移動費やら宿泊費やらは、やっぱりロバートもちなのだろうか、と・・・。



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