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ランチタイムでごった返す店内で、客達は思い思いにオーダーを叫んでいる。
「もっと、上質の客が来ないものかね〜」
店主は、ため息混じりに目線を店の入口へと移した。と、その時。
女は優雅にドアを開き、店に入ってきた。
お世辞にもレストランとは呼べない店は、女の登場で一瞬にしてパリコレの会場に変貌した。
ギリシャ彫刻を思わせる顔立ちをゴージャスなブロンドの髪が引き立たせている。
スーパーモデル並のプロポーションと一体化したその姿はミューズ(美の女神)そのものだ。
「ベーグルにトマトをスライスしてはさんで欲しいの。それから、コーヒーもね」
美しい唇から視線を離せない自分に店主が気付くまでに3秒かかった。
「スペシャルトマトベーグルサンドだ。お嬢さん」
女は微笑を返し、袋を受け取り店を出て行った。
店内にいつもの騒がしさが戻った頃、カウンターでビールを飲み続けていた男が言った。
「あの女は女神なんかじゃない、死神だ。
フェイトを殺す為にデュークが雇った殺し屋だ。名前は…たしか、リアン」
男の話に店内は再び静まりかえる。男達は思った。あんなに美しい死神なら悪くはない、と。
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